サンアントニオ乳がんシンポジウム開催中──世界で進む乳がん研究の“いま”
こんにちは。くみこ乳腺クリニック院長の岡田です。
現在、アメリカで**サンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS:2025年12月9日〜12日)**が開催されています。
このシンポジウムは、世界中の乳がん専門医や研究者が集まる、最大規模の国際学術集会のひとつです。
乳がん診療は、こうした世界の学会での発表が大きな転機となり、治療の標準が形作られていきます。
患者さんの未来に直結する“新しい知見”が次々と生まれる、とても重要な場です。
🔬 乳がんには世界的な学術集会がいくつもあります
乳がんに関する国際学会は一年を通して行われており、それぞれに特色があります。
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SABCS(サンアントニオ)
世界最大級。臨床試験の最新結果が集中して発表される“お祭り”のような場。 -
ASCO(米国臨床腫瘍学会)
がん全般の国際会議のような存在。乳がんの新治療が話題になることも多い。 -
ESMO(欧州臨床腫瘍学会)
欧州発の新しい基準やガイドラインに直結する発表が多い。 -
St. Gallen(ザンクトガレン国際乳がんコンセンサス会議)
論文の発表ではなく、“実際の治療方針をどう決めるか”専門家が議論する特別な会議。
これらの学会で発表される最新の研究は、
数カ月〜数年後の乳がん治療の標準(エビデンス)をつくっていく基礎となります。
🌟 過去に“治療の流れを変えた”歴史的な発表
● ホルモン陽性乳がん
CDK4/6阻害薬の臨床試験結果が初めて発表されたときは、世界的に大きな衝撃が走りました。
これまでより治療の選択肢が広がり、予後が大きく改善すると示されたからです。
● HER2陽性乳がん
ハーセプチン(トラスツズマブ)に始まり、パージェタ・T-DM1・エンハーツといった抗HER2薬が次々登場。
その多くが、国際学会で発表されて世界中に広まっていきました。
● トリプルネガティブ乳がん
免疫療法が奏効するという結果が初めて出たときは、
“治療が難しいとされてきたタイプに光が差した瞬間”として注目されました。
このように、多くの革新的治療は学会発表をきっかけに世界標準へと育っていったのです。
🧬 今も世界中で新しいトライアルが進行中
現在も多くの臨床試験が進められており、
その結果次第で、また乳がん治療の流れが大きく変わる可能性があります。
SABCSのような国際学会では、
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進行中のトライアルの中間報告
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最終解析結果の発表
などが行われ、翌日には世界中の専門医同士が活発な議論を交わします。
新しい結果がガイドラインに反映され、
やがて日本でも保険適用され、日常診療に届く──
乳がん治療は、この繰り返しで確実に進歩しています。
🏥 当院でも最新のエビデンスを丁寧に取り入れています
乳がん治療は、「数年前の常識」がすぐにアップデートされる分野です。
くみこ乳腺クリニックでは、
SABCSやASCO、ESMOなどの国際学会の情報を常に確認し、
患者さん一人ひとりにとって最適な選択肢をご提示できるよう努めています。
「自分の治療は今の標準に合っているのかな?」
「新しい治療法はあるのかな?」
という疑問があれば、いつでもご相談くださいね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今年のSABCSでも新しい希望の芽が生まれることを願いながら、
日々の診療にしっかり活かしていきたいと思います。
