高額療養費制度の引き上げと乳がん治療について
皆様、こんにちは。1月もあっという間に終わってしまいましたね。年末年始からインフルエンザが猛威を振るい、まだまだ、寒い毎日ですが、体調に気をつけてお過ごしくださいね。
さて、今回のテーマは高額療養費制度の負担額の引き上げと乳がんの治療について書きたいと思います。
世の中、いろんな事件やゴシップであふれていますが、そんな中、昨年12月25日に厚生労働省から高額療養費制度の見直しが発表されました。
高額療養費制度とは、医療費が高額になった場合に、その負担を軽減するための制度です。一定の自己負担額を超えた医療費は、申請により払い戻される仕組みとなっており、所得に応じて限度額が設定されています。特にがん治療などは医療費が高くつく場合がありますが、この制度によって、助かっているかたも多いとは思います。
そんな、高額療養費制度ですが、高齢化と医療の高度化や高額薬剤の開発・普及などにより医療費が年々増加していることを背景に今回見直しがなされたようです。
具体的には、以下の表のように2025年8月からと2027年8月からとで段階的に限度額が上げられることとなります。
大体、乳がんになる方の年齢で一番多いのが40代から60代ですのでこの世代の平均年収を見ますと500万円~600万円です。
現在の制度でも高額な薬剤(例えば、ベージニオ®)などを必要とする乳がんの方は毎月8万以上の出費が確実です。具体的にモデルケースで今後の高額療養費制度の変更によって、患者さんの負担額がどのようになるかシュミレーションしてみたいと思います。
仮想モデル
45歳 主婦 夫は46歳サラリーマンで年収は600万円の方が、ステージ3A のホルモン陽性HER2陰性タイプの乳がんになったとしましょう。術後は半年間の抗がん剤治療とその後はホルモン治療10年と最初の2年はベージニオという分子標的薬が必要と医師から説明を受けました。
夫の収入からだいたい限度額は8万円くらいになります。抗がん剤治療は外来でしたため、月3万程度で済み、高額療養費制度の出番はありませんでした。その後、ホルモン治療とベージニオの治療となった際にベージニオが薬代だけで15万程度/月、3割負担でかかるため、受診のたびに高額療養費制度の限度額までは支払うことになります。ベージニオを内服後、最初は骨髄抑制や下痢の副作用が出やすいために月に1回以上は通院する必要があります。半年から1年くらいたつとある程度副作用のコントロールもついてきて、2か月に1回くらいの通院になる場合もあります。
単純に最初の1年は毎月高額療養費がかかり、2年目は2か月に1回かかるとします。
最初の1年は3回目までは毎月82430円かかり、4か月目以降は多数該当が適応され44400円かかるとします。
なので、今の制度では2年間の総額が約90万円かかります。
これが2026年8月から治療開始となった場合は高額療養費の限度額は88200円となり多数該当が48900円となり、2年目の2026年8月からはさらに区分が細分化され、年収600万では約113400円の負担額となり多数該当は63000円となるため、2年間の総額が約102万かかります。
さらに、2027年8月からの治療開始となれば2年間で約122万かかります。
同じ治療していても、制度の見直しによって、30万以上の増額となり、治療を断念せざるおえない方が出てきてしまうのではないかと危惧します。40代は、子育て中の方も多く、ある程度収入があっても、経済的余裕がそれほどないのが現状かと思います。政府にはぜひとも、現状をもう少し見たうえで、制度の変更をお願いしたいものです。少し、見直しの意見も出てきているようですが、今後の動きに注目したいと思います。
乳がんは、発見が遅れれば遅れるほど、再発リスクが上がるだけではなく、再発を予防するための治療が高額になる可能性があります。やはり、できるだけ早めに発見するのが、何よりも治療費の節約にもなります。乳がん検診は市町村からの補助もあり、金銭的負担が軽く受けることができますので、日ごろからご自身の乳房をちょっと気にかけてあげて、気になる事があれば早めに乳腺科を受診し、何もなくても定期的な乳がん検診をおすすめいたします。