乳がんにもロボット手術の波が!
みなさま、こんにちは。すこ~しだけ、秋の気配が感じられるようになってきましたね。
そうはいっても、まだまだ暑い毎日ですが、いかがお過ごしでしょうか。
能登半島では、地震に続き、大雨被害が出ており、大変な思いをされている方々がいることをお見舞い申し上げます。私も、寄付くらいしかできませんが、復興支援させていただこうと思います。
さて、今回は、前回に引き続き乳がんの手術についての話題です。前回は切らないラジオ波焼灼療法についてでしたが、今回はロボット手術についてです。
ロボット手術というと、何か未来の手術のような響きですが、実際には内臓の手術では、現在普及しつつある手術です。
消化器外科領域などでは、かつてはお腹を大きく切る開腹手術が一般的でしたが、ちょうど私が研修医のころから、腹腔鏡手術が急速に普及しだしました。そして今や、開腹手術より腹腔鏡手術が主流になっています。さらにその腹腔鏡手術の際にポートという腹壁から腹腔内に筒のような器具を貫通させて、そこから鉗子やカメラを挿入し、カメラの画像を見ながら、鉗子を手で操作していましたが、ロボット手術はその鉗子などが機械につながっており、術者はその機械を操作することで遠隔で鉗子などを動かして手術をする方法です。
もっとも有名なロボット手術の機械にDa Vinci(ダヴィンチ)という機械があります。
私も、大きな病院で働いていた時は、手術室でそのダヴィンチの機械を見たことはありましたが、実際、乳腺外科では使う機会がないので、ダヴィンチを使用した手術は未知の世界であります。
そんな、ダヴィンチを使ったロボット支援内視鏡手術が乳輪温存乳房切除術にも適応拡大されるようです。
乳がんの手術の歴史も、昔はHalsted手術という、乳房、大胸筋、小胸筋、腋窩リンパ節を切除する手術から始まり、胸筋温存乳房切除術→乳房温存術(部分切除術)やセンチネルリンパ節生検→リンパ節転移が少数なら追加の腋窩リンパ節郭清はしない→インプラントによる乳房再建手術の保険適応という流れになってきており、手術はどんどん縮小され、体への負担が軽減されていき、さらには乳房喪失への対応や整容性に配慮した手術へと進化してきています。
今回のロボット手術も乳輪を温存し、より小さな傷で過不足なく病変を含めた乳房切除を行い、再建手術を追加することによって、より整容性と安全性に優れた体への負担も少ない手術になることが期待されています。
基本的には、ロボット支援内視鏡手術もステージ2まででリンパ節転移のない比較的早期の乳がんが適応になりますので、いずれにしても早期発見・早期治療が重要になります。
乳がんは早期に発見すれば、治療の選択肢も増えますし、整容性などにも配慮した治療を受けることができる可能性が、今後ますます高まりますので、皆様もブレスト・アウェアネス(乳房を意識した生活習慣)を身につけて、定期的に乳がん検診を受けましょう。
Da Vinci手術の様子